『文章読本』
谷崎潤一郎
中央公論新社(1996) 600円
文章読本 (中公文庫) | |
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谷崎 潤一郎
中央公論社 1996-02 おすすめ平均 |
世に出たのが昭和9年なので、今から70年以上昔にかかれた日本語文章の書き方本である。
美文の書き手と呼ばれた谷崎の文章の作法が作者自身によって語られる。
谷崎に言わせれば文章には以下の側面があるという。
・用語 …… 単語の選択。
・調子 …… 文章のリズム。
・文体 …… 表記のスタイル。講義体・兵語体・口上体・会話体
・体裁 …… 活字などを使用した文字組のヴィジュアル。
・品格 …… 文章の品位。
・含蓄 …… 日本語による「ほのめかし」の作法。
ではこれらを踏まえた上での谷崎にとっての「よい文章」とは何か?
「しかしながら、文章のよしあしは『曰く云い難し』でありまして、唯今も述べましたように理窟を超越したものでありますから、読者自身が感覚を以て感じ分けるより外、他から教えようがないのであります」(p83)
そう。この書においての谷崎の主張は基本的に「ほのめかし」スタイルで記述される。
理解よりも体得を目指すというのはいかにもアジア的というか。
とは言っても、このような谷崎の記述が文章をうまくなりたくて頑張っている人には非常に実践的に感じるのだから不思議だ。