『カーニヴァル化する社会』
鈴木 謙介 著 講談社(2005) 735円
カーニヴァル化する社会 (講談社現代新書) | |
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日本で商用インターネットが開始されてからずいぶん経った。ネットが生活の一部となっている人も珍しくなくなった。
そんな現在を社会学的見地から分析した書。
ネット上にはある種の「熱狂」が生じる場合がある。某匿名掲示板風に言えば「祭り」、ブログ風に言えば「炎上」、ised@glocom風に言えば「サイバーカスケード」と呼ばれるものである。このような社会現象を現代社会(の一部)を端的に表す基本モチーフとしながら、その現象を構成する個人の社会的在り様(⇔内面意識)を分析した書。ただし本の構成上「社会学的に分析された『個人』」と「ネット上での『熱狂』」とが接合されるのは最終章においてである。
この書のキーワードとしては「ハイテンションな自己啓発」「個人化(≒キャラ化)」「情報レベルで断片化された個人」「(具体的・象徴的・概念的意味での)データベース」が挙げられる。
内容をまとめると、いわゆるネット上での「熱狂」とは、所属する社会的グループを「選択する余裕」が個人に確保された現代社会における、「ロー・テンションになることを宿命づけられている」個人らが「ハイ・テンション」になるために(自分の内面と呼応する「もの」がどこかにあると信じられている?)ネット上の突発的に形成されたある「群れ(その意義はどうでもいい)」を選択したことの結果ということになっている。
(実際のページ配分から言うと、「ロー・テンションになることを宿命づけられている」という主張の論証にかなりの量が割かれている。)